第1章 20170401

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いつもと変わらない、何気ない日常。 桜がぽつぽつと咲き始め、永い眠りについていた数多の生物が目を覚ます。どことなく漂い始めた春の匂いが、4月の始まりを告げる。 3月に小学校を卒業した翔(かける)もまた、4月から始まる新生活に心を弾ませていた。 中学生となる自分。新しい友達はできるだろうか。部活動はうまくやっていけるだろうか。彼女はできるだろうか。 そんな未来の自分への期待を胸にしまいながらも、翔はいつもと変わらない日々を過ごしていた。 昼間は友達と遊び、夕刻になると塾へ向かい、そこで勉強をする。そして塾が終わると友達と話しながら家に帰る、いつものタイムスケジュール。 1日1日に違いはあれど、大まかな流れは一緒だった。 近い将来に楽しみなことがあると、それまでの期間が随分と長く感じるものだ。単調なタイムスケジュールとも相まってからか、翔は楽しみな新生活を目前にしながらも、日々の生活を退屈に感じていた。 今日もそんな日々の1つである夕方からの塾を終え、友達と帰路につく。 「今日の晩御飯何かなー。」 「ウチは母さんが寿司買ってくるって言ってたわ。」 「えー、いいなぁー。」 「てかさ、今日の塾長の口臭かったくね?」 「いや、わかんねー。俺今鼻詰まってんだもん。」 「俺もそれ思った。めっちゃヤバかった。」 「いやマジで、今日の口はヤバイくらいヤバかったよなー。」 とりとめのない会話。 この何とない会話だけでも、続くとなると十分に面白い。塾長の口臭の話題に関しては2回に1回は必ず出てくるが、何故かそれなりに盛り上がる。 そんな時、翔はふと、今日がいつもとは違う『特別な日』であったことに気がついた。 ハッと閃いた翔は、早速口を開く。 「あのさ、盛り上がっちゃってるところ悪いんだけどさ、俺やっぱり今日は楽しめねぇわ」
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