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「どちらもあんたのものじゃない! わたしのものだと何度言えば解るんだ、この色ボケ変態外道!」
「あっはっは、やっぱり威勢がいい女だなぁ。もっと胸と尻があれば言うことないんだが……やっぱり俺の好みじゃないな」
どこを触っている、とヴェロニカの怒号が響き渡り、椅子と机を蹴り倒したヴェロニカがクリノリンで膨らませたスカートの下から特殊な棍を引っ張り出した時、血相を変えたマイクが飛び込んできた。
「わーっ、ヴェロニカ! 馬鹿、試験中だぞ! 受験生のみなさん、お騒がせしました……」
「マイク、はなせ! 今日こそこの外道を……」
マイクに羽交い絞めにされたヴェロニカは、当然強制退場だ。
だが、その途中で、マイクが受験生の一人をみて驚いた顔をした。その視線の先を追ったノア王子も、
「あ!」
と叫んで動きを止めてしまった。
やや長めの灰色の髪を首の後ろで一つに結び、腰には短剣をさした体格の良い男がいる。
右目に眼帯をしているが、整った顔であるのはわかる。すれ違うと、潮のにおいがする。
そして何より、シャツの襟もとに覗く、銀のペンダントにマイクは目を奪われた。
「俺のと……同じもの……?」
マイクが自分の物を取り出そうとした瞬間、ノア王子がその男に飛びかかっていた。
「貴様! 生きていたのか!」
男は突進してくるノア王子に気付いていたのだろう、王子の繰り出した剣を軽々とかわして床に膝をついている。
「王子? この男の人と知り合いなの?」
「王女! この男には近づくな。危険な男だ……」
「え?」
「王女、この男は……この男だけは許すことができない……」
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