:怪しい男:

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 ヴェロニカは、その男と緊迫した表情のノア王子を交互に見た。 「え、えっと、あの……?」  どうしたものかと思案気なヴェロニカを押しのけて、もしかしてフィリップさんですか、とマイクの弾んだ声が割り込んだ。 「マイク!? あなたもこの人と知り合いなの?」 「ああ、そうなんだよ、ヴェロニカ! この人、俺たちの間では超有名な人だよ!」 「俺たち――?」 「そう! 伝説の海賊、キャプテン・フィリップ!」  海賊!? とヴェロニカの目が丸くなった。  イエーイと、マイクとキャプテン・フィリップなる男が、ハイタッチを交わした。  その横でノア王子は苦虫を噛み潰したような顔をしているし、ヴェロニカは目を丸くして突っ立っているし、受験生は誰一人として解答用紙を見ていない。  ここが教師の採用試験会場だということを覚えている人は、誰もいないだろう。 「ああ……採用試験は、やりなおしじゃな……」  何事かと心配してやってきたヒーリアが室内を見るなり、呆れたように呟いた。
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