:王子の過去:

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:王子の過去:

 ノア王子とヴェロニカが同じ空間に長く一緒にいて何事も起こらない、という「珍事」が発生した。 「……ちょっと、ノア王子! あのフィリップは何者なのよ?」  『伝説の海賊』と、海賊だったマイクが知り合いでもおかしくはない。  だが「砂漠の国の王子」と海賊が顔見知りというのは、不思議な感じがする。 「……因縁の相手だ」 「……フィリップの相手を寝取ったのね?」 「違う!」 「じゃあ恋人を寝取られたの?」  そんなことではない、と王子は激しく首を振った。どうやら色恋沙汰ではないらしい。  だったらどういう関係だろうか、と必死でヴェロニカが知恵を絞る。 「……だめだわ、色恋とノア王子が切り離せない」  はー、とノア王子が大袈裟なほどにため息をついてみせた。 「君は胸も貧相だが頭の中も貧相なのだね? いや訂正しよう、君の体は筋肉しかなくて女性らしい丸さが乏しいが頭の中も筋肉でぎっしりらしい。こんな王女に治められる民が可哀想だ。この俺がコロンと婚姻を結んで王族となって、統治してあげようではないか、がっはっは!」 「貴様なんぞに大事な民が託せるものか!」  いつもの口げんかを繰り広げながらも、二人の視線は前方に固定されている。     
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