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なにせこの部屋の窓から見える中庭には、親しげに談笑するマイクとフィリップがいる。
フィリップはマイクと肩を組んで笑っている。時折、風に乗って二人の会話がここまで届く。
「お兄さん、俺と同業だね?」
「はい! 鮮やかな手並みのフィリップ船団に憧れて、俺はマイク船団を作りました」
「お、知っているぞ。白地にドクロのジャケットの……そうか、君がマイクか」
マイクが瞳を輝かせるのが、ヴェロニカとノア王子は面白くない。
二人の傍にはジャスミンを派遣してあるのだが、そのジャスミンまでもが笑顔を見せている。
「マイクの笑顔! マイクは俺の前であんな顔をしない!」
「ああっ、あの男! まさかマイクを海賊に引き戻そうとしてるんじゃないの? ちょっと王子、どうにかしなさいよっ!」
「ぐえっ、王女、苦しい苦しい……」
ちなみに二人の頭からは「採用試験」のことが抜け落ちて久しい。
ヒーリアとビアンカの仕切りによって採用試験は再開されたのだが、ヴェロニカとノア王子は
「邪魔です!」
と、両手を腰に当てたビアンカに部屋から追い出されてしまった。
「あの……ビアンカ、わたしたち、その、試験官なんだけど……」
「受験生の邪魔をする試験官などいらぬぞ」
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