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「わたくしと、ヒーリアさまで行います。ヴェロニカさまとノア王子は、お隣の掃除用具入れで大人しくしていてくださいませ!」
「よいか、わらわが良いと言うまで、そこから出てはならぬぞ! 受験生の迷惑である」
こうしてヴェロニカとノア王子は掃除用具入れに隔離され、受験生はやっとまともな試験を受けることができたのである。
「……で、王子。あのフィリップは何者なの? 顔見知りなんでしょう?」
珍しいことに、王子がふいっ、と目線を逸らした。これは怪しい、とヴェロニカの眼が輝いた。
「王子、こちらを見てください」
さらにノア王子は顔ごと視線を逸らせた。だがそれを逃すヴェロニカではない。嬉しそうな顔で王子の耳を力の限り引っ張った。
「痛い、痛いではないか! 野蛮な女、俺の傍に寄るな!」
じりっと王子が後ずされば、ヴェロニカがずいずいっ、と前進する。それを何度か繰り返すと、背中にモップや箒や雑巾が当たった。
「くっ……」
「さあ王子、答えてください」
床に座り込んだ王子を逃がさないように立ちふさがり、あろうことか壁を愛用の棍で ドン! と叩いた。
「ひっ……凶暴な女は好みではない……」
何とでも仰い、と笑ったヴェロニカはそのまま自身も屈みこみ、王子の耳元でささやいた。
「あの男は何者だ? 答えろ」
王子の顔色が悪くなった。
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