21人が本棚に入れています
本棚に追加
「好みではない女に詰め寄られると……恐ろしいな……」
再び、壁がドンと鳴る。ようやく観念したのか、王子が早口で答えた。
「……あれは……だ……」
「え、なに? 良く聞こえない……」
実弟だ、とノア王子が叫んだ。
ぱちぱち、とヴェロニカが瞬きをして棍を下ろした。
「待って、あの人、元・王子さまなの!? 王子が海賊になっちゃったの!?」
「王女、そこまで驚くことはないぞ。不幸な成り行きとはいえマイクだって元は一国の皇太子だ。最早、何番目かもわからぬ王子が海賊になったとて、不思議はない」
「いやいや! 問題あるでしょう!」
この世では、王子が海賊になるのが流行なのだろうか。いやそんなまさか、と眉間に皺を寄せるヴェロニカを見て力なく笑った王子が、さらなる衝撃発言をした。
「やはり王女は世間知らずであるな。よし、このノア王子が世間をおしえてさしあげようではないか!」
珍しくヴェロニカが、こくこく、と頷いて床に行儀よく座った。
「俺には姉上も弟も沢山いるが、深く愛し合って夜ごと楽しめるほどに仲が良かったのは、クラーラ姉上とフィリップくらいなのだ」
「は……?」
「なのに姉上は山賊になり、弟は海賊になってしまった」
「はい……?」
最初のコメントを投稿しよう!