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「誤解しないでほしいんだけど、セレスティナさまも、やっぱり『婚約指輪』の意味を御存知なかった。だから、騎士への感謝の気持ち、くらいだったと思うよ。実際に僕は、セレスティナさまに「騎士」としてお仕えしていたからね。僕はどんなにセレスティナさまを愛しても届くことはないし、僕の恋心なんて全く気付いていらっしゃらなかった。そんなところは、母と娘、そっくりのようだね」
そうだったのか、とマイクとジャスミンが思わず微笑んだ。
つい先日、フィオが困ったような顔で言っていた言葉を思い出す。
「ねえさまは、恋愛にはとってもとっても、鈍いんです。それは、かあさま譲りの、筋金入りみたいです……。マイクにいさま、諦めずに、ねえさまを口説き落としてくださいね」
リーカ国の王族のみが持つことを許される、ペンダント――それを、どうして海賊であるフィリップが持っているのか。
ヴェロニカが気にしないはずはない。
「なんでそんな変な男がウチのペンダント持ってるの! 誰が渡したのよーっ!」
「いや、俺に聞かれても……」
「では本人に聞くわ」
「まて、王女。俺たちはここから……」
ヴェロニカの我慢の限界が来た。
まちたまえ、と止めるノア王子の手を振り払って、棍で窓を叩き割ったヴェロニカは、庭のフィリップへと突進した。
「ちょっと、それをどこで手に入れたのよ!」
ヴェロニカが飛びかかるよりはやく、フィリップはその場から走り出していた。
「こらっ、まちなさーい!」
がばっ、とドレスの裾を抱えたヴェロニカが、栗色の髪を振り乱してフィリップを追いかける。
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