:王子の過去:

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 フィリップは下調べをしているのだろう、最短距離で最も町へ近い城門へと走る。 「待て、止まれーっ!」 「王女、止まれと言われて止まる人はいないよ。ことに悪人は絶対止まらない」  それもそうだ、と思い直したヴェロニカは、棍をフィリップの後頭部めがけて投げつけた。 「うわっ、恐ろしい人だ……」  それをギリギリのところでかわしたフィリップは、尚も逃走する。  さらに追いかけようとしたヴェロニカだが、ちょうど、試験終了を知らせる鐘がゆったりと鳴り響いた。 「くっ……」  そう、今日は『試験の日』だ。  しかも、掃除用具入れから出てはいけない、と言われたのではなかったか。 「大変! お城に戻らなきゃ……」  くるっ、と回れ右をして道を戻り始めたヴェロニカの前に、憤怒の形相のビアンカと、あきれ顔のマイクがいた。 「ヴェロニカさまっ! グーレースにいいつけます! お説教です!」 「ごっ、ごめんなさい……」  城へ戻る道で、なぜあの男がペンダントを持っているのか、マイクが説明した。 「騎士……? 宮廷騎士がいたなんて初耳だわ……」 「俺も知らなかった」 「騎士と、貴婦人か……。よその国の話だと思っていたわ」 「騎士道ってすげぇぞ。愛する婦人の希望とあれば剣を抜いて決闘までするんだぜ」 「へぇ!」     
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