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しかしマイクはふと、セレスティナは、本当はフィリップを愛していたのではないかと思った。
(一瞬の秘めた恋、ってやつか。俺とヴェロニカもそうなるのかね……)
ここしばらく一緒にいて忘れていたが、自分は『お付武官・マイク』でしかない。
ペンダントを貰ったことで浮かれて満足していたが、その後、進展は何もないのだ。
マイクは、隣を歩くヴェロニカをちらりと見た。少しきれいになった気がする。
瞬間、ふわりと覚えのある香りが漂った。
「あ、香水……?」
「どうしたの、マイク」
「ヴェロニカ、香水つける趣味あったのか……」
「え、つけてないわよ、そんなもの」
ヴェロニカが首を傾げた拍子に、ふわりと、また漂った。
その香りの正体を思い出した瞬間、マイクは泣きたくなった。
――ノア王子の移り香……
「……身分から行けば、そっちが妥当、だよな……」
「マイク? 本当にどうしたの? 顔色悪いわよ?」
「なんでも……ねぇ……」
ヴェロニカの心配そうな視線を振り払って、マイクは一人、城へ走って戻った。
きょとんとするヴェロニカの後ろで、ビアンカとジャスミンは慌てていた。
「大変! ヴェロニカさま、マイクを追って!」
「そうですよ、追いかけてくださいませ。試験はビアンカさまとわたしでどうにかしますので!」
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