:王子の過去:

10/16
前へ
/161ページ
次へ
 しかしマイクはふと、セレスティナは、本当はフィリップを愛していたのではないかと思った。 (一瞬の秘めた恋、ってやつか。俺とヴェロニカもそうなるのかね……)  ここしばらく一緒にいて忘れていたが、自分は『お付武官・マイク』でしかない。  ペンダントを貰ったことで浮かれて満足していたが、その後、進展は何もないのだ。  マイクは、隣を歩くヴェロニカをちらりと見た。少しきれいになった気がする。  瞬間、ふわりと覚えのある香りが漂った。 「あ、香水……?」 「どうしたの、マイク」 「ヴェロニカ、香水つける趣味あったのか……」 「え、つけてないわよ、そんなもの」  ヴェロニカが首を傾げた拍子に、ふわりと、また漂った。  その香りの正体を思い出した瞬間、マイクは泣きたくなった。 ――ノア王子の移り香……  「……身分から行けば、そっちが妥当、だよな……」 「マイク? 本当にどうしたの? 顔色悪いわよ?」 「なんでも……ねぇ……」  ヴェロニカの心配そうな視線を振り払って、マイクは一人、城へ走って戻った。  きょとんとするヴェロニカの後ろで、ビアンカとジャスミンは慌てていた。 「大変! ヴェロニカさま、マイクを追って!」 「そうですよ、追いかけてくださいませ。試験はビアンカさまとわたしでどうにかしますので!」     
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加