:王子の過去:

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 抱き着くだけで精一杯、思い描いてた一連の行動は全部頭から飛んでしまった。  しかもマイクがびくっと大袈裟なほどに体を震わせたものだから、ヴェロニカは益々混乱してしまった。 (こっから先、どうしたらいいの……?)  硬直するヴェロニカとは対照的に、いつもと変わらないマイクの声が降ってきた。 「……ヴェロニカ、俺に張り付いて何やってんだよ。相手が違うだろ」 「お……お付き武官が、主を放り出してなにやってるの……」 「職務怠慢で解雇か?」 「そんなことするわけないでしょ! これからも一緒にいられるんだ、って喜んだのはわたしだけだった? マイクは……やっぱり海の上に戻りたい?」  はい!? と、素っ頓狂な声をあげてマイクが振り返った。 「海の上は気持ちいいんだろうな……わたしだって、海の向こうへ行ってみたいと思うもの。ずっと海の上にいたマイクには、王宮は窮屈よね……」 「まて、まてまて。俺は少しも窮屈じゃないぞ、お前の傍にいられるだけでいいんだから。お前がどこかの王子のもとへ嫁に行くなら、着いていくし……」  と言ったところでヴェロニカが、冗談! と叫んだ。     
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