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「わたしは、『仮・女王』よ。この国を出るはずないでしょう! ねえ、マイク。ここに学校が出来て……ビアンカがちゃんとヘンリー一世のもとへお嫁に行って……そうしたら、海の向こうへ連れて行ってほしいな」
「ヴェロニカ、そんなに海の向こうの国に興味があるのか?」
もちろん、とヴェロニカは笑った。
「じゃあ、俺の船に乗せてやるよ」
「約束よ!」
「ところでヴェロニカ……」
「ん?」
「この、不思議な動きの手の動きはなんだ? マッサージか?」
「えーっと、『乳を揉む』だよ?」
「……待て、何でお前が俺の乳を揉むんだ?」
「本にそうするって書いてあったんだけど、違うの?」
その本を見せられたマイクが絶句した。
「ちょ……これ、どこで手に入れたんだ……成人向け官能小説だぞ……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その頃リーカ城では、合格者の身元がわからず、一同困惑していた。記入された名前は『老翁・ハンス』現在の居住地は、城下の宿だった。
宿へ人をやって調べたところ、数日前から滞在している北国からの旅人だと言う。
宿の人によると、かなりイケメンな息子が一緒らしい。
添付された似顔絵と全身絵は、ちんまりとした印象の、地味で大人しい枯れ木のような老翁だ。
「隠居のおじいちゃん、って感じ……」
そうビアンカが評したが、だれも異議は唱えない。
豊富で正確な知識を持っていながら、今までどこの家庭教師にもついていないと言う。
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