:王子の過去:

15/16
前へ
/161ページ
次へ
「わたしは、『仮・女王』よ。この国を出るはずないでしょう! ねえ、マイク。ここに学校が出来て……ビアンカがちゃんとヘンリー一世のもとへお嫁に行って……そうしたら、海の向こうへ連れて行ってほしいな」 「ヴェロニカ、そんなに海の向こうの国に興味があるのか?」   もちろん、とヴェロニカは笑った。 「じゃあ、俺の船に乗せてやるよ」 「約束よ!」  「ところでヴェロニカ……」 「ん?」 「この、不思議な動きの手の動きはなんだ? マッサージか?」 「えーっと、『乳を揉む』だよ?」 「……待て、何でお前が俺の乳を揉むんだ?」 「本にそうするって書いてあったんだけど、違うの?」  その本を見せられたマイクが絶句した。 「ちょ……これ、どこで手に入れたんだ……成人向け官能小説だぞ……」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇  その頃リーカ城では、合格者の身元がわからず、一同困惑していた。記入された名前は『老翁・ハンス』現在の居住地は、城下の宿だった。  宿へ人をやって調べたところ、数日前から滞在している北国からの旅人だと言う。  宿の人によると、かなりイケメンな息子が一緒らしい。  添付された似顔絵と全身絵は、ちんまりとした印象の、地味で大人しい枯れ木のような老翁だ。 「隠居のおじいちゃん、って感じ……」  そうビアンカが評したが、だれも異議は唱えない。  豊富で正確な知識を持っていながら、今までどこの家庭教師にもついていないと言う。     
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加