21人が本棚に入れています
本棚に追加
物腰は柔らかく、上品で威厳がある
「……しかし、どうも気にかかる。どこかで会っていると思うのだ」
「奇遇じゃな、わらわも、それが気になっていた」
「陛下とヒーリアさま共通のお知り合いってことは、どこか王侯貴族の方かしら?」
「しかしビアンカさま……それにしてはちと、地味すぎるというか、普通すぎますぞ……?」
グーレースの言葉に、やはり異議は出ない。
王侯貴族でここまで普通なら、かえって記憶に残っているに違いない。だが、こんな普通の御老人は誰の記憶にもない。
「貴殿はどこのどなたなのだ……?」
「隠居の王様っていったら、たいていこんな風に、お髭があったり王冠がのっていたり……」
羽ペンでビアンカが、カリカリと落書きをした。
それを見たヒーリアとコロン十三世が同時に声をあげた。
「あーっ!」
「こっ、これは!」
「え、え、? どうなさったの?」
「ビアンカ、お手柄だ! この凡庸で貧相な御老人……いやいや、この御老人はアシェール国の現国王陛下であらせられる!」
最初のコメントを投稿しよう!