:プロローグ:

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 治療がなかなかすすまない大量の『白い亡霊』た――内乱の首謀者・エンリケ一派が使用した薬物によって中毒にされてしまった人々の治療を急いでいる。  さらに、玉座を狙うエンリケ派の残党もまだ、残っている。  これだけではない。  もとは敵国の王子・ノア王子とその側室・ヒーリアはひょんなことからリーカ国に「居候」することになったのだが、今でもそのままである。  ヒーリアは居てくれてちっとも構わないのだが、ノア王子はヴェロニカと折り合いがものすごく悪い。  傍から見ていると「青年・マイク」の奪い合い――要するに二人は恋敵である。  しかし、マイクは誰が見ても「ヴェロニカ一筋!」である。ヴェロニカしか、見ていない。王子の無駄な横恋慕である。ヴェロニカもマイクが好き――だと思うのだが、はっきりしていない。  ともかく、ノア王子は「相手の国籍も性別も地位も関係ないさ!」という強引かつ我儘な男のため、マイクやヴェロニカの意志は関係なく 「マイクは俺のものだ!」  と宣言して事あるごとに――本当に、昼夜問わず、暇さえあればマイクを襲っている。マイクは、リーカ国近衛長官・グーレースに仕込まれた凄腕の武術家だが、自分の国に滞在中の他国の王子を傷つけるわけにはいかず、思うような抵抗が出来ずにいる。  そこに付け込んだ王子は、執拗に迫っている。それはもう、周囲があきれるほどの執拗さだ。  マイクの部屋から悲鳴が聞こえたら、ほぼ間違いなく王子の仕業だ。当然、棍を掴んだヴェロニカが疾風の如く駆けつけて王子を追い払う。  王女らしからぬ下品な罵詈雑言が飛びだすこともあるが、それはご愛嬌、その姿は非常に頼もしく、勇ましい。 「ヴェロニカさま、かっこいい……!」  城内では、『ヴェロニカさまファンクラブ』なるものが発足したのも自然な流れだった。
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