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そんなある日、勝手に王宮を抜け出して町を散策していたノア王子が、真面目な顔でヴェロニカの執務室へやってきた。
「王女、少し良いかな?」
「はい、何でしょう?」
「他国の内政に干渉するのは良くないと知っているのだが……黙っていられなくてね」
お座りください、と椅子をすすめると、王子は素直に腰を下ろした。これはかなり珍しいことである。
「王女、この国には『学校』はないのかな?」
「がっこう……? なんですか、それは」
「ある年齢以上の子供たちが集って、毎日かよってきて勉強する制度だよ。この国では、子供が勉強するには各家庭で家庭教師を雇うのが主流だそうだね」
こくん、とヴェロニカが頷いた。
「しかしそれだと、裕福な家庭の子しか、学べないだろう? そこで俺たちの国では、身分の貴賤を問わず、義務教育というのがあってね、7つから15までの子は毎日学校へ通って勉学に励むしきたりだ」
へぇ、とヴェロニカは目を丸くする。
「待ってください、ノア王子。庶民と貴族が一緒に『がっこう』に通って一緒に学んで……?」
「そうだよ。貴族の子供は狭い階級社会でふんぞり返ることを一番に覚える。そしてそれがただされることはない。これは教育上良くない。できるだけ幼いうちに、庶民と交わる機会が必要なんだ」
ふーむ、とヴェロニカは考える素振りを見せた。今までに考えたことのなかった視点だ。
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