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「お前にとっては、そうだろうな」
随分と話の通じなさそうなやつがきた……。一応王女が背に入るように立ち位置を調整する。
「お前が勇者か?」
「だとしたら、どうする?」
「だとしたら、仲間じゃないのか?」
「仲間?魔王が勇者に言う台詞じゃないな」
こいつ、もしかしてNPCか?
「俺たちは自由だろう?肩書きに縛られる必要はない」
「自由?お前はそうか、魔王というのは確かに好き放題にできるものかもしれないな」
「勇者は違うのか?」
「俺は目覚めたときから勇者だ。王からの命を受け、魔王を殺すことだけを生きがいとしてきた」
やっぱりNPCなのか……? いや、目覚めたと言ったな。
「そんな生き方にこだわって、お前はどうしたいんだ?」
「こだわらなければ、何をよりどころに生きていけばいいんだ」
「お前は、この世界の人間たちを見ても何も感じなかったのか」
「感じたさ」
「なら!」
「彼らのように、何も考えず、生まれた時から与えられた役目だけを果たす人生に、どれだけ憧れたか!」
こいつはNPCとは違った……。なのに、何を言ってるのかわからない……。
かみ合わない。こいつは、決定的にかみ合わない。
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