2人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺たちは自由だ。あいつらとは違う。何だってできる。お前もそうだろ? 勇者」
「何だってできる……。確かにそうだ。俺は勇者として、この身に余るほどの力を持っている」
「だったら、好きなことをすればいいだろ!」
「そうだな、だから俺は、お前を殺す」
「なんでだよ……」
同じ“生きた”人間なのに、どうしてこうも……。
「俺が勇者で、お前が魔王だからだ」
「そんなものに縛られる必要はないだろう!俺も!お前も!」
「これが俺の生き方だ!」
どうしても戦う必要があるのか……。せっかく見つけた三人目の仲間だったのに。
「魔王は、勇者には勝てない」
「“この世界の”魔王は、だろう!」
まとまらない感情を魔力にのせる。
実は森での移動中に魔法が使えるのか、試していた。色々やってみてわかったことだが、魔王にとって魔法に余計な要素は必要なかった。ただ力を込めて腕を振るえば、望む結果が得られる。それが魔王だ。
「さよならだ」
なのに、俺の望んだ結果は、何も得られなかった。勇者の声が、俺の耳にこだまする。
身体が浮遊感に包まれる。
俺は今、斬られたのか。
「お前はもう十分すぎるほどに、魔王だったんだよ」
勇者の声が聞こえる。
最初のコメントを投稿しよう!