本編

11/13
前へ
/13ページ
次へ
「俺たちは自由だ。あいつらとは違う。何だってできる。お前もそうだろ? 勇者」 「何だってできる……。確かにそうだ。俺は勇者として、この身に余るほどの力を持っている」 「だったら、好きなことをすればいいだろ!」 「そうだな、だから俺は、お前を殺す」 「なんでだよ……」  同じ“生きた”人間なのに、どうしてこうも……。 「俺が勇者で、お前が魔王だからだ」 「そんなものに縛られる必要はないだろう!俺も!お前も!」 「これが俺の生き方だ!」  どうしても戦う必要があるのか……。せっかく見つけた三人目の仲間だったのに。 「魔王は、勇者には勝てない」 「“この世界の”魔王は、だろう!」  まとまらない感情を魔力にのせる。  実は森での移動中に魔法が使えるのか、試していた。色々やってみてわかったことだが、魔王にとって魔法に余計な要素は必要なかった。ただ力を込めて腕を振るえば、望む結果が得られる。それが魔王だ。 「さよならだ」  なのに、俺の望んだ結果は、何も得られなかった。勇者の声が、俺の耳にこだまする。  身体が浮遊感に包まれる。  俺は今、斬られたのか。 「お前はもう十分すぎるほどに、魔王だったんだよ」  勇者の声が聞こえる。     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加