2人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱり今回も、だめだった……」
少女はうつむき、小さくつぶやいた。
「王女様、助けに参りました。共に城へ帰りましょう」
「あなたがもう少し、堅物でなければ良かったのだけどね」
自嘲気味につぶやくその真意は、勇者には伝わらない。
「それは……申し訳ありません。ですがこれが性分なもので……」
「ええ。よくわかってます。誰よりも……」
「誰よりも……?」
勇者は困惑する。
探し求めた王女でさえも、この世界の人々と同じなのだろうか?
話がどうしても今一歩のところでかみ合わない、彼らと。
「さて、どうしたものかしら。ただ待つだけでは事態は好転せず、勇者と行動を共にすれば魔王に襲われ、魔王と行動を共にすれば勇者に殺されてしまう」
「王女様……?」
「勇者よ」
「はい」
「私を殺しなさい」
「……え?」
勇者の疑惑は確信に変わる。
だとすれば彼女の役目は、ここで死ぬことなのかもしれない。
愚直に生きるべき道筋を探してきた彼は、この世界の望みをかなえることに重きを置く。
だからこそ、その剣を、迷いなく王女に向けた。
「きっと次は、あなたも救ってみせるから」
少女の最期のつぶやき、誰に向け、誰に届いただろうか。
最初のコメントを投稿しよう!