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「いえいえ、魔王様に敗れるのも、ここでこの役目を授かっているのも、考えてみればそういうものかと納得しております」
そういうもの?何か引っかかるものを感じながらも、会話を進める。
「もう数百年も経つんだ。もう開放することもできるが、これで俺が解放するといえば、また挑んでくるのか?」
「いえいえ、たとえ役目を解かれても、私はここで待ち続けるでしょう」
「何を待つんだ?」
「勇者です。いつか現れる勇者を止めようと奮闘し、それでも力及ばずやられてしまう。それが私の役目であり、人生です」
さっきの引っ掛かりが確信に変わる。こいつ、言ってることがおかしい。
「勇者に殺されるために生きるのか?」
「そうなりますかね」
力なく笑う青年を見て、気分が悪くなる。彼に対してではない。俺が転生したこの世界に対してだ。
死ぬために生きる。人生をそう語るやつもいるだろう。
いずれ人間は死ぬ。それは当然のことだ。
だが彼は、そうではない。彼は死ぬことを“役目”だと言った。それは、“生きている”とは言わない。
それも、数百年そうして生きてきたのだ。強い憤りを覚える。
「……ここから一番近い人の住んでいる場所を教えてくれ」
「森を抜けられるとすぐに王国の王都があります」
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