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彼は、いわゆる、NPCだ。だが、彼は触れられるし、こうして話も出来た。生きている人間がNPCになっている。
生まれ変わった世界は、とんでもないところだったかもしれない。
森を抜けると、なぜか一本の道があった。まっすぐ歩くとすぐに王都へとたどり着く。
魔王を封印したダンジョンと王都が、真っ直ぐつながっている。ありえない。おかしな話だ……。魔王が眠っている間に冒険者が殺到して道ができたとでも言うのだろうか?いや、そんな雰囲気もない。いずれ現れる勇者のための道であり、こうして魔王に利用されるなんてことは考えもしなかったのだろう。
世界への違和感はすでに確信になっていた。
「止まれ、何が目的でこの王都に入る」
門番が予定調和の質問を投げかけてくる。
「旅の者だ。少し街で休ませてもらいたい」
「そうか、ならば良し。だが、魔王が復活したという噂で都は混乱している。巻き込まれたくなければ早く立ち去るべきだ」
この忠告も、俺の身を案じたものではない。
王都に入るためには門番と話さないといけない。森を抜けて状況を確認した俺は、しばらくこの門番を観察していた。ここまでの台詞はすべて決められたものだった。
旅の者、というキーワードも、他の人間が使っていたものを拝借した。何の問題もなく王都へ入ることができた。
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