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人だけじゃない、この世界自体ががRPGの世界だ。とんでもないところへ転生してしまった……。
このままいけば魔王は勇者に倒されて終わる。魔王という存在が何人もいる世界なら話は変わるが、なんとなくわかる。この世界の魔王は俺だけだ。
「俺以外に“生きた”人間がいれば、希望が持てる」
俺の旅の目的は、NPCではない“生きた”人間を見つけることになった。
「ようこそ、王都へ」
「この先の森には魔王が封印されている。近づくんじゃないぞ」
「やあ、お兄さんは冒険者なの?僕も大きくなったら冒険者になるんだ!」
街ゆく人々へ手当たり次第声をかけてみる。聞いてもいないのに色々なことを教えてくるところが、昔やったゲームを思い出させる。会話ができないというほどではないが、気づいてしまうと会話をするのも虚しい。彼らは同じようなことを繰り返すだけだった。一言二言で離れ、次の可能性にかけて移動していく。
「何をお買い求めになりますか?」
「よく来たね。泊まっていくのかい?」
店にも顔出す。ここもだめだった。世間話程度で魔王が復活したという愚痴をこぼしていたが、決定的に会話がかみ合わない。いや、噛み合わないのではない。彼らは喋ることができる内容がごくごく少ないんだ。
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