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俺と同じように、王都とダンジョンまでの距離の近さに驚いていた。
「さすが魔王様、この短期間で人間の女を攫って来られたのですね。それも、かなりの上玉を」
ここを出て一日も経っていなかったので、ダンジョンの中の道はしっかり覚えていた。最下層まで行きつくと、待っていたかのようにあの緑の魔物が声をかけてくる。
「人聞きの悪いこというな。むしろ勝手についてきたくらいだ」
「魔王様であれば、当然でしょう」
「どういうことだよ……」
この魔物には何をやってもこの調子で褒められ、おだてられそうだな……。
「さて、こんなところに連れてきて、どうするつもり?」
「お前がどこでもいいから連れ出せって言ったんだろうが!」
調子のって俺をおちょくる余裕はあるらしい。魔物を見ても物怖じない様子だったし、俺と同じように、何か戦闘に関する能力も身につけているのかもしれない。
「まあ、勇者を待つにはおあつらえ向きだし、しばらくはここにいるのも手かもしれないわね」
「そのパターンだと俺、やってきた勇者にやられちゃうじゃん」
「その通りだな」
「え?」
声がした方向を向くと、先ほどまで俺に笑いかけていた緑の魔物が真っ二つに切り伏せられていた。
「おいおい……そんなに悪いやつじゃなかったのに、そいつ」
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