2人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
本編
目覚めたら魔王になっていた。実際に身体中に漲っている力が、俺にその事実を告げている。
石を切り出したような空っぽの部屋。俺が座るやたら豪華な椅子以外には何もなかった。
「お目覚めになられましたか、魔王様」
俺が魔王だと確信したのは、この緑色の魔物も一因だ。
喋る言葉も、歩く姿も、来ている服も、普通の人間と同じ。せいぜいローブが映画で見た魔法使いっぽい、くらいの違和感しかないそれは、ほとんど普通の老人といって問題なかった。唯一、肌の色が暗い緑色をしていることを除けば。
「まさか、記憶を失っておられるのですか」
素直に状況を伝えると色々教えてくれた。
俺は数百年の眠りからようやく目覚めた魔王らしい。今は配下らしい配下はこの緑の老人しかいないが、かつては人間の大国を三つ同時に相手取れるだけの大戦力を所有していたとか。
「魔王様が直々に戦われれば一つの魔法で一国が吹き飛びます。そのことを考えれば、戦力などさしたる問題にはなりませぬ」
「そんなに強かったのか」
「今は目覚めたばかりで力が出せないでしょうが、ご安心くだされ。すぐに力は戻るでしょう」
最初のコメントを投稿しよう!