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大丈夫。このフロアのゾンビはだいたい倒したし、僕は夏にゾンビの倒し方を教えてもらっている。
それに、夏が見つけてくれた最強装備、金属バットとヘルメットもあるのだ。
「ココア! ココアどこ!」
「キャン!」
真昼間とは言え、広い建物の奥は非常灯しか点いていなくて薄暗い。
その奥まった一角、「わんにゃん広場」と言う看板の向こうから、さっき聞いたココアの泣き声が僕に答えた。
「ココア~……おいで~」
そういえば、こっちの方は見回りに来ていなかった。
確かペットショップを兼ねた動物と触れ合えるエリアだったはずだ。
そう考えて踏み出した僕の足元に、鈴と綿毛のついたペット用のボールが「ちゃりりん♪」と音を立てて転がった。
「なんだいココア、遊んでほしいの?」
腰をかがめてボールを拾う。
低くなった視線の向こう、地上50センチほどの高さに、突然複数の赤い光が瞬いたように見えた。
「ヴぁあぁぁァァん!」
「ヴァヴぅぅゥゥあぁァ!」
威嚇するような唸り声。
僕は無意識に金属バットを横なぎに振った。
ガツンと衝撃があり、「ギャン!」と言う悲鳴が上がる。
転がった犬、そこから飛び散った血液。その向こう、暗い影の中から薄暗い明かりの中に、次々と犬や猫……のゾンビが姿を現した。
「キャンキャン!」
動物ゾンビの向こう側でココアが吠える。ココアの泣き声に反応した動物ゾンビが、一斉にココアの方を振り返った。
いけない。ココアはゾンビに対抗する手段を持っていない。
僕は手に持ったボールを「ちゃりりん♪」と鳴らしながら「おい! こっちだ!」と叫ぶ。
ボールを床にころがし、両手でバットをしっかり構えた僕の方に向かって、最初の犬ゾンビが飛びかかった。
子供のころによくやった野球のバッティングと同じだ。
人間の頭と違って、動物ゾンビの襲い掛かって来る高さはちょうどいい。
フルスイングで1匹目の犬ゾンビをかっ飛ばし、僕はバットを構えなおした。
「つぎっ!」
一匹、二匹、三匹……。
まるでシートノックでもしているように次々と、犬ゾンビや猫ゾンビを潰してゆく。
10匹ほどのゾンビを倒すと、周囲はやっと静寂に包まれた。
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