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「はぁ……はぁ……ココア、おいで」
肩で息をしながら僕はココアに手を伸ばす。
部屋の隅で震えていたココアは、バットを投げ出した僕の腕に飛び込んできた。
やったぞ。僕はやり遂げた。
僕はヒーローだ。
ココアを抱き上げてきびすを返すと、僕は呼吸を整えながら非常階段へと向かった。
「キャン! キャン!」
腕の中で、興奮したようにココアが吠える。
ゾンビはもう居ないだろうけど、用心するに越したことは無いので、僕は優しくココアの頭を撫でた。
「ココア、静かにして――」
――ガリリッ
突然、ふくらはぎに鋭い痛みを感じて僕は膝をつく。
床に視線を向けると、そこには血だらけの肉片を大事そうに抱えてもぐもぐと口を動かすハムスター……のゾンビが居た。
手に持った肉片は僕のふくらはぎから滴る血痕と繋がっている。
僕は痛みをこらえて、振り上げたブーツのかかとをハムゾンビに振り下ろした。
ぐちゃ、とつぶれたハムスターから足を引き、よたよたと立ち上がる。
出血も思ったより多くないし、肉がえぐれている割には痛みも無い。これならまだ大丈夫だ。
急いで夏の所へ戻らなくちゃ。あの小さな女の子が喜ぶ姿も早く見たい。
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