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 僕は非常階段へと急いだ。  あれ? でも、待てよ。  僕はもしかして、ゾンビに噛まれてしまったのか? ――夏曰く、ゾンビに噛まれたものはゾンビになる。  そうだ。僕はもうゾンビになりかけているんじゃないか?  こんな小さな傷で? いや、夏の言う事は正しかった。今回も、たぶん正しい。  ほら、だんだん視界も暗くなってきた。 ――夏曰く、ゾンビの視力は皆無に等しい。  やっぱり夏は正しい。あぁ、僕はもうダメだ。  ……でも、せめてココアだけは……女の子に返してあげたい。  僕は闇に埋もれそうになる思考を何とか繋ぎ止めながら、非常階段を登った。  屋上へ続くドアを少しだけ開け、ドアの隙間から漂ってくる人間の旨そうな匂いに抗いながらココアを放して、すかさずドアを閉める。  ドアの横にあった角材で扉が開かないように塞ぎ、僕は疲れ果ててドアにもたれかかった。 「匠! (あーーー)どう(うううーー)して! たす(うああーー)く!」  夏の声かな?  ハウリングしたみたいな金切り声に紛れてて良く聞こえない。  どんどんと叩かれるドアの振動にシェイクされ、僕の意識はそこで途切れた。
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