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「ココアちゃん! ……きゃあああ!」 「ヴぁあぁァァん!」  ドアの向こうでは小さな女の子の悲鳴を皮切りに、次々と犬のゾンビに襲われる人々の絶望の叫び声が上がる。  国守匠が命を賭して運んだ子犬は、匠が無意識にその体を喰らってしまったために、既にゾンビに成り果てていた。  完璧に不意を突かれた形で、次々とゾンビを増やし、逃げ出すための唯一の扉すら匠に閉じられた屋上の――匠と夏が命懸けで救った――人々が全員ゾンビになるまで、1時間もかからない。  もちろんその中には、この短い時間の間に匠が思いを寄せるようになった、尋常夏の姿も含まれていた。  そんなことも知らず、自らの理想であるヒーローになるべく行動した匠も今やゾンビとなり、ゆっくりとその場を離れ、下のフロアへと獲物を求めて彷徨うのだった。 ――国守 匠(くなもり たすく)の場合(完)
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