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うわぁ、何年ぶりだろう? 女の子の手。やわらかい。
「な……なんだよ、結構……積極的じゃん……」
全く初対面の男に話しかけたり、人の髪の毛をいきなり掴んだりと傍若無人に振る舞っているくせに、彼女は僕に手首を掴まれると、ちょっと腰が引けて目が泳ぐ。
その赤らめた頬を見て、なぜだかこっちも頬が熱くなった。
ヤバい、こちとら男子校で女の子に対する免疫なんかないのだ。
しかも改めて顔を見ると、結構……いや、かなり可愛い。
その可愛い顔の向こうに、さっきライヴカメラで見たばかりの、ゾンビの顔がふらりと現れた。
「ヴぁァァ……」
ゾンビは何のためらいもなく女の子の首に歯を立てようとする。
僕は掴んでいた女の子の手首を咄嗟に引っ張り、椅子の上で抱きしめる様にして彼女を受け止めた。
「ばっ……おい! あっあたし、そっそんな安い女じゃ……ね……ねぇから!」
彼女の体から匂い立つ甘い香りが僕の鼻腔をくすぐり、思わずにやけそうになった顔を彼女の手がぐいっと押しのける。
僕は頭を斜めに傾けながら、なおも襲いかかろうとするゾンビの腹へ、力いっぱい前蹴りを叩きこんだ。
「ヴぁァっ!」
ゾンビは唸り、その声を聞いて彼女も振り返る。
僕らの見ている前で、蹴りを食らったゾンビはよだれとも血とも見える液体を吐き出しながら、隣のブースの壁にどかんとぶつかって床に倒れた。
「き……きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
一瞬呆然とした彼女は、すぅっと息を吸ってから、今までの言動に似合わない、女の子らしい悲鳴を上げて僕の胸に抱き着く。
甘い香りと柔らかな胸の感触に、僕はくらくらして彼女を抱きしめ直した。
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