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「お客様! どうなさいま……した?!」  悲鳴を上げる女子高生と、それを抱いている無精ひげの男、そしてその前に倒れている血だらけのゾンビ。  それを交互に何度も見た店員は、後ずさりしながら「誰か! 警察! 警察呼んで!」と叫び始めた。  何度も「警察! 警察!」と叫ぶ店員に、背中から何かが襲い掛かる。  僕が蹴飛ばしたのとは別のゾンビ。 「あーお客様?! 困ります!! お客様?!」 「ヴァぁあアァァあぁぁ!!」  もつれあうように倒れた店員はパニック状態に陥っていて、抵抗らしい抵抗も出来ないまま喉を食い破られた。  真っ赤な血が噴き出し、周囲にムッとするような鉄錆の臭いが充満する。  ごぽっ……ごぽぽっ……。  詰まった下水道のような音を立てて店員が倒れると、その匂いと騒ぎを聞きつけた数人が半個室ブースから顔を出し、それに倍するゾンビが別のブースから姿を現すのが、見たくも無かったけど良く見えた。 「おい! みんな! 逃げろ! ……ゾンビだ!」  我ながらなんと下手な誘導だろうか。  僕の芝居がかったその声に、あるものはスマホで動画を撮りはじめ、またあるものは「カメラどこ?」などときょろきょろし始める。     
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