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僕は女の子を床におろし、もう一匹よってきたゾンビを転ばせると、自衛隊時代から愛用している鉄板入りのブーツで、そいつの頭を思いっきり踏みつけた。
しかし案の定、撓みはするもののそう簡単に頭蓋骨はつぶれない。
全体重を乗せて、2度、3度と踏みつけると、ゾンビの頭はやっと「ぐしゃ」と歪んだ。
「ぉうぇ……」
最悪の感触だ。
僕は血と脳髄にまみれた半長靴2型をパーテーションにこすり付けながらそこから離れた。
「夏よ」
吐き気を堪える僕に女の子がそう言って手を差し出す。
僕は思わずその手から身を守るように体を引いた。
なんだこれ、殴られ続けた子供の条件反射みたいじゃないか、かっこ悪い。
「名前。尋常 夏。よろしく。さっきは助けてくれてありがと」
「あ、あぁ。僕は国守 匠」
「じゃ、こっち」
今の会話のどこに「こっち」へつながる「じゃあ」があったのかは知らないが、夏は握手した手をそのまま引っ張って、『すぽーっつ!』と言う看板が掲げられた建物の方へ向かう。
途中何匹かのゾンビを蹴り飛ばしたが、『100円で15分遊び放題!』の看板の下、渡り廊下から見る明け方の街には、ゾンビがうじゃうじゃいるのが見えた。
どうなってるんだ。家族は大丈夫なのか?
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