ツマ

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勝手にグラスに麦茶を注ぎぐびぐび喉を鳴らし飲み干す。それを二回繰り返し「あーうまかった」とコップを置いた。 器を手に持ちフルーツポンチのシロップを飲む南「風呂、結構空いてきたよ」と親指で暖簾の方をさし教えた。 「んー・・・まだあとでいいや」 「相変わらず忙しいの?」 「まぁ・・・」 「だよなー。俺らはほぼ19時に終わって帰るけどキャピトル333のやつらって毎日超残当たり前だもんな」 「まぁ・・」 「それで交代勤務もっあるってきつくね」 「選んでんの自分だし。あと金欲しい」 「もしかして一人暮らしにむけて貯金とか?」 この寮で一人だけ生活リズムのちがう自分。深夜に入る風呂の水音とか廊下を歩く足音には十分に気を配っているし迷惑はかけていないはず。まだまだここにいたい。でもいつか、サランラップのかかった皿を見て、出ていこうと決心する日が訪れるかもしれない。 新しい寮へ行くくらいなら少々金がかかっても一人暮らしがしてみたかった。 「それもあるしバイクの維持費とかも・・・。あと実家に仕送りはじめようかと思ってんだよね」 「えらいじゃーん。・・・あれ、でもお前って確かいい家のぼっちゃんじゃなかったっけ?」 「そうだけど。家族が増えるかもしれないから」 「え、かーちゃんに子供できたの?」 「ちがう。ねーちゃんとその娘が本格的に南家の住人になるかもしれないから。子供って大学出るまで3000万くらいかかるらしいじゃん。俺も仕送りするくらいの協力はした方がいいかなって思ってるだけ」 実家を騒がせているあれこれを要所要所かいつまみながら説明すると高橋が「お前んちも大変だな」と眉を下げた。
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