ツマ

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「つまのねーちゃんって昔ここに挨拶きたことあったよな。嫁にしたい女子アナ№1のサトパンに激似ってここのやつらが騒いでたあのねーちゃん?確か三人いる一番上の」 「そうそう」 「あんな綺麗な人と結婚しても浮気するんだな。ま、どんないい女も手に入れば色あせるって話はよく聞くけど」 で。 自分の手を離れた途端、また輝きだしちゃったみたいなんだよね。 この半年毎日会社帰りにうちを訪れて、玄関で静かに膝を折り地べたに頭をつけては帰っていくという義兄。 昔、あの男がうちに結婚の挨拶にきた時。僕がこんな綺麗な人と一緒になれるなんてとしきりに喜びを言葉にしていた。 だけど人間はどんなに強く憧れ欲したものも、それが自分のものになった途端、持っていないものの方に意識がむいてしまう。 相手の女はねーちゃんより10以上若い女なんだとか。 けど。 若い女を手に入れ満たされたと思ったが束の間。家族の温かさを失えば、それが恋しくなり取り戻そうと躍起になる。 ないものねだりの一生だ。 なおいわく三万分の一の確率で生まれてくる幸せの猫に巡り合わない限り、人間はこの無限ループを死ぬまで繰り返すらしい。 ーー会った瞬間一目惚れでした!僕の人生こんな綺麗な人と一緒になれるなんて夢にも思っていなかった 確かに初対面で印象に残りやすいし、飲み会や遊びの場所では花としてちやほやしてもらえる。 でも結局みてくれなんてラッピング用紙と同じだ。どんなに綺麗でも最後はびりびりに破られてゴミ箱行き。芸能人になったり、なおみたいに夜の街で容姿を武器にのしあがるのなら有利かもしれない。 でも多くの人間に注目されちやほやされることと、たった一人の人間に大切にされて幸せになるっていうのはまったく別の話だ。 自分はあの三人の姉達のやるせない恋を見て育ったからよくわかる。 「あ、でさー」高橋が何かを思い出したように切り出した。 「ん?」 「日曜そこの浜でバーベキューした時、ガスなくなってつまが一緒に買い出し行った子いたじゃん」 「あー」 「あのちっちゃくて天然っぽくてめっちゃ可愛かった子」
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