ツマ

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火曜。 『会社の先輩に映画の割引券もらったんだけど、もしよかったら一緒に行かない?「恋海」っていうザッキーが出てるやつ』 こっちはスルーしてんのにまるで返事されたかのように返してくる。あんたさっきからひとりで会話してますよ。メンタル強すぎてこえーっす。 でもって恋愛映画もザッキーもまったく興味ないんだわ。ごめーん。 水曜。今日の昼。 『もし映画に興味なかったらカフェ行ったり買い物でもいいよ。いつもみんなでだからたまには二人で会えたら嬉しいな』 たまに仲間うちで飲んだりカラオケやボーリングにいくたび次は二人で会いたいとにおわせてくる女。その度「みんなで」って言ってんだから察しろってことなんだけど。ようするに「ごめん」って話なんだからさ。 男も女も一定の割合で積極的な勘違いをするやつがいるけど共通するのは自分の都合のいいようにしか先を思い描けないっていう特徴かな。 で、今日の夜。 『お仕事忙しいのかな?高橋君に南くんの部署が大変なところだって聞いた。あんまり無理しないでね。悩みとかあったら聞くよ。いつでもいいので返事もらえたら嬉しいです』 そーゆー私が支えてあげる的なのいらないから。 独りよがりな親切を押し付けられたくはない。 積極的に本を読む習慣はない自分だけど、文章の行間や選ぶ言葉に、こいつはどんな人間だろうと内面を想像するのは面白いから好き。 くだらねー女だなと思った。いつでもいいから返事が欲しいなんて書くと待ちくたびれるはめになるって知らないのか? 画面を上にスクロールしこれまでのやりとりを見てみるが話す内容に全く興味が持てなか った。付き合うほどでもないなってのもすぐ判断できる。 人としていいなと思って。もっと知れば異性として好きになりそう。それくらいすぐわかる。
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