ツマ

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『こんばんはー新人さん?今から車で一発どう?』 なんで新人ってわかったんだろ。調べてみると登録初日は検索画面に印がでる仕様らしい。 そうしてる間にも3通のメールが届いていた。まさに入れ食い状態だけど男を釣る趣味はない。 『舐め犬募集しています』 うげ。 センスねーなって思うけど、こういう場所で求める相手の形を明確にするのは必要なことなのか?松永も「真剣にセックスフレンドを探しています」なんて看板出してたし。 おかげでこっちは自分の人生で一生無縁だと思っていたこんな欲情野郎の吹き溜まりみたいな場所に登録し、知性もセンスの欠片もない発情野郎達が送りつけてくるメールが次々受信されていくメールボックスを冷めた目で眺めている。 『エッチなセフレ募集中でーす♪』 『ねー複数プレイとか興味ある人?』 『セフレになりませんか?前モデルやってたから外見は悪くないよ』 『オイラ28のフリーターでーす!』 松永がいなかったらこんなところ電波でつながっているだけでも不快だ。 そーだ、といい考えが浮かぶ。プロフィール欄の一番下にある自己紹介スペースに『本気の相手がいるため興味本位や好奇心でセックスはしません』そう記載しておいた。これで静かになるだろう。 皿を洗って布巾でふいて戸棚に片付ける。玄関で靴をはき壁の時計を見あげると0時半だった。静かに扉を開け外にでる。雨水を含んだ土が瘴気を発し、畦道は夏の虫と蛙の大合唱だった。月を小さな虹の輪が囲んでいて雲がかかると月の方が動いて見える不思議を見上げる。 携帯を空にかかげオムレツみたいな今夜の月を画面にとじこめた。あとでアップできるよう画像を保存し、歩いて20分程の距離にあるコンビニへむかう。 浜に面したゆるいアスファルトの坂道を下っていると防波堤のむこうから、ざざんと波の音が届く。 その優しい音を聞きながら、 「お前には関係ねーだろ・・」口調をまねて呟いてみた。ただ心配してるだけなのに。松永に言われた言葉のはしっこがチクりと胸をさす。
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