563人が本棚に入れています
本棚に追加
じゃゴールってなにかと聞かれたら、それはやっぱりセックスしてからだを繋ぐことだった。そしたら今感じてる焦りや不安が解消されるように思えた。
もうすぐ日をまたぐ。
片付けを済ませ、ここまで縮めた距離を振り出しに戻されたくないから靴をはき「お邪魔しました」とドアノブに手をかける。
「南」
呼ばれふりかえった。
「うまかった」
松永が言った。
合った視線をはずし「じゃあな」とリビングにもどっていくその姿に苛立ちと安心がごちゃまぜになって噴き出した。
おせーよ。
そういうのは普通、一口食べたときに言うんだって。
あーもう。
今ここから帰ったら次こんな感じで二人になれるのっていつだろう。
来週?再来週?来月?
無理、と思った。
「松永さん」
忘れ物した、そう言ってドアをしめた。
「なんもねーけど」と机の下や布団の下をめくる手を掴んでとめる。「ここにある」と告げる。
松永が眉をひそめ、はっとする。「ーーお前」と言いかけた松永に体重をかけた。
缶ビール三本の酔いもあってか思うより簡単に絨毯に張り付けることができた。
「やめろバカっ」と開く唇に今度こそ舌をねじこませる。
無理やりじゃない。だって全力の抵抗じゃないのがわかるから。
今日一日、受け入れるか拒否するか迷ってる。
今の「うまかった」だって、言うかやめるか最後まで迷っていた。そんなふうにゆらゆらしてるなら沈ませたい。
自分に。
「ーー今日は、来るだけだって…」
「もう12時超えてる。今日じゃないよ」
中途半端に受け入れられて中途半端に拒絶されて、はっきりしなくて気持ち悪い。
白黒つけたい。もちろん黒なんてない前提のもとでだ。
誰かを思って報われないなんて嫌だ。
感情にまかせシャツの裾から手を入れる。つなぎじゃないから簡単に入った。
早く自分のにしたい。誰にもとられたくない。
だって生まれてはじめて自分からいいな、って思った相手なんだから。
子供じみた傲慢さがこれでもかってくらい露呈する。
最初のコメントを投稿しよう!