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正確には半年前の話だ。 どこぞの富裕国から200機の大量受注が入って以来、要求される生産スピードと組み立てる人間の数が見合わなくなり要請を出したが人員不足は自分の班だけではなく『スカイキャピトル333』のどの部位の組み立て班も同じだった。 天塩にかけ育てた中堅どころはどの班も手放したがらない。人事は来年新人を多めにとるからもう少し頑張ってくれと言うが、航空機の組み立ては育つまでがながく入社後1年は敷地内にある研修センターでの座学で終わる。その後現場に配属され2,3年は教育担当についた人間の下で学びながら働く。 新人を入れたところで確実に足手まといになるため要望は取り下げていたはずだが目の前のまだ子供くささが抜けきらない風貌に嫌な予感がした。 「レインディア28はわかるよな?」 「はい・・・たしかあそこって貨物機っすよね」 翔太の働く真田重工は海外の航空機メーカーの下請けとして航空機の部品を作っている。レインディアは貨物機をメインに製造しているヨーロッパのメーカーだった。同じ真田の社員でもキャピトルとレインディアなど担当部署が違えば駐車場や食堂、社員寮も区分され、違う会社の人間と対峙しているような感覚になる。 「そこの主翼班に頼んでもらってきてやったから、来週からお前んとこで面倒見てやれ」 嫌な予感が的中する。こっちは今すぐ即戦力になる人材がほしいわけでこんな半分子ザルみたいな新人がほしいわけじゃない。 赤ん坊みたいにくすみのない唇や殻をむいた卵みたいにつるっとした頬に眉をひそめ、うちの会社に学生はいないはずだが高校生じゃねーだろうなと疑わし気な視線を向けた。 翔太は「あの、ちょっとこっちいいすか?」とさっき一服していたあたりまで課長をひきつれ「あいつ、見た感じえらく子供に見えるんですけど・・」まさか学生じゃないですよね?と、一応確認する。 「高卒入社みたいだから歳は22で若いけど今年で4年目だって聞いてるよ」 「22・・」 右も左もわからないような新人じゃないにしてもまだまだ不満はあった。 「・・レインディアから連れてきたってことはあいつ、これまでにキャピトルの機体触った経験あるんすか?」 「今回がはじめての異動だって言ってたから、ないと思う」 「主翼班からってことは・・まさかこれまで尾翼の組み立て経験もなしっすか?」
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