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人見知りしないたちなのか、ただたんに空気が読めていないだけなのか。初対面の翔太にまったく物怖じしない様子で話し始める。さらには新しい仕事場に興味津々という感じで建屋を仰ぎ「すっげー、レインディアの建屋より2倍くらいでかい。でも10倍ぼろいけど」と、楽し気に言う南に唖然とした。 週明けからこいつの面倒をみなければいけなのかと思うと、何が何でも突き返すべきだったのではないかと早くも後悔しはじめていた。そんな翔太をよそに南が自分のスマホを空にかざし電子音のシャッターを鳴らす。 「ほら」 翔太のそばに来て撮った写真を提示した。画面の中に青空と雲と梅と、うっすら映る虹色の色彩。 「松永さん、さっき撮ろうとしてたよね?」そう言ってはにかんだ南のまわりにだけ、ぽっかり春が来ているみたいだった。邪気のない眼差しと存在感に気おされて翔太は思わずいっぽ後ずさり距離をとってしまった。
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