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薄茶色の手袋をとって、マフラーとセットの手袋をはめる。薄い生地なのにあたたかい。
「……いいね。最高」
「それならいいけど」
かんかんかんかぁん、と音がする。降ってくる雪の量はだんだん増えてきている。きっと次の電車で、止まってしまうだろう。歩のレジ袋をひとつ奪って、立ち上がる。
「ほら、帰ろう」
「うん」
ホームにやってきた電車に乗り込む。そっと涙を拭き取って、深呼吸。帰ろう、家に帰ろう。大切な家族と、大切な思い出を連れて、わたしと弟は家に帰る。
きっとシグナルはあの子に会えるだろう。わたしの友人を助けてくれたというあの子に。会いたい人のところに連れて行ってくれる、あのちいさな電車に乗って。わたしのマフラーは、あたたかいだろうか。あのマフラーも歩がくれたものだ。赤いマフラーが冬でもとてもあたたかくて、ずっと使っていた。だから、きっと、あの子たちをあたためてくれるはずだ。
大切な家族を抱きしめるように、ぬくもりを抱きしめて、あの子たちがしあわせになれたらいい。わたしはあたたかいマフラーに顔をうずめて、笑う。
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