午後四時に最後の雪が降る。

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 深知だって最高の友達だよ、と宵は言った。ぼろぼろともみっともないくらいに泣いていた。今度こそお別れだった。  ぱちり、一度の瞬きで宵は消えた。  床に一枚、宇宙を切り取ったみたいな切符を残して。           * 「え、姉ちゃん、なんでいるの」 「……なによ、歩。文句あるの」 「ないでーす」  両手にレジ袋と学生鞄をぶら下げた弟は、わたしの隣に座る。あと十分ほどで、次の電車が来るだろう。  歩は結局、短大に進路を決めた。ついこの間合格通知をもらって、奨学金も受けれることになった。卒業式も近い。有給とらなきゃ、と脳内メモに残しておくことにする。 「……歩ぅ」 「なに」 「あんたも、ずいぶんと頑張ったのね」 「え、なに急に」 「なんとなく」 「えー、あー、そう。ありがとう」  あはは、と笑ってみる。雪がちらつくホームに声が響く。 「あれっ、姉ちゃん、マフラーは? 今朝巻いて行ったよな」 「うん」 「どうしたの。会社に忘れた?」 「あげた」 「は?」 「あげたの。プレゼント」 「……えー、いや、姉ちゃんのだから勝手にすればいいとは、思うけど……」  弟はもごもごと口ごもる。なんなのよ、と言うと、学生鞄の中からなにやら包装された箱を手渡される。 「本当は明後日あげるつもりだったけど、今でいいや。はい」 「え、なにこれ」 「開ければいいじゃん」  なんだか膨れたように弟がそう言うので。ぺりぺりと包装紙を破いて、箱を開く。箱一面の、宇宙色。 「え、」 「マフラー、と、手袋。マフラー、高校の時からずっと同じやつ使ってるだろ」 「そうだけど」 「えー……お誕生日おめでと、姉ちゃん」  あ、と思わず声が出た。そうだ、明後日、わたしの誕生日。箱の中から藍色のマフラーを取り出す。白の刺繍は雪の結晶。柔らかくて、温かい。首にぐるぐる巻くと、なんだか涙が出てきそうになった。 「……えーっと、姉ちゃん、大丈夫?」 「……だい、じょうぶ。ちょっと泣きそう。なにあんた立派に育ってるのよ」 「姉ちゃんが育ててくれたからだろ」 「そうだけどっ。なにこれ超あったかい。いいやつじゃん」 「姉ちゃん、新しいのとかなかなか買わないから、ぼろぼろのやつでもずっと使い続けるじゃん。ちゃんといいの買わないと」
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