黄昏ゲーマー

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「やっぱうちの学校じゃん」  心臓がバクバクと脈打ち始めたのが分かった。どうしよう、因縁をつけられるのだろうか。隣の空いた席に相沢君が座った。 「何年?」 「……二年」  問いに答えるのは怖かったが、問いに答えないのはもっと怖かった。 「マジ? タメじゃん。え、何組?」 「二組」 「あー俺五組だから階違うのか。名前は?」 「岸本」 「岸本……岸本……わかんね。つか、そんなビビんなよ」  相沢君は笑いながら僕の肩を小突いた。  それは人によっては「なめんなよ」と怒るような行為だったかもしれない。だが僕はふ、と心が軽くなったのが分かった。何か、何か、と話題を考える。だが。 「……相沢くん、投げ抜け出来てないから二択迫られた時めっちゃ弱いんだよ」  情けない事に僕が思いつくような事など結局格ゲーの話題しかなかった。こんな素っ頓狂な返答だというのに相沢君は何も気にしていないように頷いた。 「まぁ唐竹怖ぇからジャンプ出来ねえし。てかカウンタ行ってもう一回やろうぜ」  カウンタというのは近くにあるもう一軒のゲームセンターだ。彼が誘うのは理由がある。プレイ料金がとにかく安いのだ。僕らが今居るチェーン店のゲームセンターと比べ、同じ機種なのにこちらは百円一プレイに対し、カウンタでは五十円二プレイと破格だ。  勿論それには理由がある。こちらにあるような最新機種やプリクラ、クレーンゲームはカウンタには無かったし、全体的に照明が暗く店内も汚く、雑居ビルに無理やり筐体だけ詰め込んだような場所だった。不衛生な感じがして不愉快だったし、何よりも不良の溜まり場になっていて、僕らのようなオタク達は近づく事も恐れていたのだ。 「い、いいよ」  ”怖いからカウンタには行きたくない”僕らオタク層でもそれを明確に言う者は居なかった。僕らも「ビビってる」なんてのは恥に感じる。だから、僕は今相沢くんの誘いを断る事なんてできなかった。
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