9 終末(未来の記憶3)

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ダルネスはアベルの様子を気にしながら、徐々にその挿入を深くする。 「はあ、くるし…」 「アベル…。全部挿入ったよ…」 アベルは涙で滲む視界で、自分を見つめる魔物の姿を見た。醜い異形のはずのその魔物は、その顔に誰よりも人間らしい感情を浮かべていた。 苦しい、愛しい、切ない、嬉しい。泣き笑いのような複雑な感情を浮かべ、今やひとつになったアベルに如実に告げてくる。 愛していると。 「ダルネス。大丈夫だから、動けよ…」 アベルは魔物であるダルネスを完全に受け入れた。これは人間に対する裏切り行為であろう。だが、誰に謗られても、人でなしと罵られようと、自分はダルネスを受け入れる。アベルは改めて覚悟を決めた。 「アベル!アベル!!」 ダルネスは緩やかに腰を動かし、アベルが耐えられることを確認すると、次第にその動きを早くした。 「あっ、あ、あっああっ」 アベルは輝く金髪を揺らしながら、声を我慢することも忘れ、ダルネスの激しい腰の動きに翻弄された。力強く揺さぶられ、パンッパンッと肌と肌がぶつかり合う卑猥な音が響く。こんな淫猥に支配された状況下で声を堪えても何の効果もないと、アベルは痛みと圧迫感よりも快楽を追うようにした。そうすると次第に快楽の奔流にのまれていき、繋がった箇所からは違和感が消え失せ、快感のみが生じた。 「アベル!好きだ!好きだ!!」 「はぁんっ!ダルネスっ!!あぁっ、いいっ」 ダルネスは息を荒げ、我を忘れて、アベルにその感情をぶつけるかのようにひたすら腰を振っている。気持ちよくて頭が沸騰しそうだ。アベルは知らぬ間に再び吐精していた。お互いに汗だくになり、唾液塗れになりながら唇を貪り合った。息もできないほど互いを求め合い、人間と魔物は二つでひとつになった。 「アベル、中に、出してもいい?」 アベルに腰を打ちつけながらダルネスが問うてくる。快感に我を忘れかけていたアベルは咄嗟に返事が返さず、髪を揺らし辛うじて頷いた。 「くっ…!!アベル…!!」 「あっ、あああっー!!!」 アベルの体内に、ダルネスの熱い精が注がれる。一滴残らず注ぐつもりか、零すことは許さないと言わんばかりに、ダルネスはアベルの身体をより密着させた。 「アベル…」 「ん、ダルネス」 最後にもう一度長い口付けを交わし、時間を忘れて二人は抱き合っていた。人間も魔物も関係なく、今はただ、互いの温もりを感じていたかった。
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