1 入団式

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1 入団式

晴天のこの日、大国バーレニア城の王の間では、新たに城に仕官する栄誉を掴んだ若き騎士見習いや、まだあどけなさの抜けきれない魔術師見習い達が、入団式に挑むため整然として王の登場を待ちわびていた。 バーレニア国は、地図上で示すと大陸の北側に位置する軍事国家である。肥沃な大地に恵まれ、鉱山からは鉄や金が産出される為、平民の多くが農業や鉱夫で生計を立てており、他国から出稼ぎにやってくる者も多い。比較的裕福な国家だった。 バーレニアを語る上で外せないのは、世界に誇る「騎士団」と「魔法兵団」である。 鉱業の発達から武器の生産もさかんで、質の良い武器防具を作る術に長けている。そんな背景もあり、バーレニアの騎士団と言えば、列国最強と謳われていた。 魔法兵団は騎士団より歴史は浅いものの、古来より自然崇拝が主だったこの土地では、「自然の力」を利用した呪術が用いられてきた。それが発達したのが「魔術」である。非力で体力が無い者でも素養さえあれば力を行使でき、呪文により自然から力を取り込んでそれをイメージに変える。イメージは炎や風様々だ。イメージを定着させた後はそれを具現化する。具現化されたイメージは実体となり、実際に熱や冷気を伴って対象物に放出される。 剣術とは違い、魔術は素養がなければ全く行使できない。先天的な才能が必要な職業だといえる。 バーレニアは騎士団と魔法兵団の活躍により、その地盤を確固たるものにしていたのである。 現在は賢王と呼ばれるアレクシアが王座につき、税の軽減や平民の地位向上などに取り組んでいる。 整然と王を待っていた少年達だったが、王の間の東にある扉から入ってきた二人の人物を確認すると、その人物達の正体に気づいた者を中心に動揺が拡がっていく。 「!!」 「あの方々は…」 扉を閉め、玉座から見て右斜めの位置にその二人は立つ。そこには立派な体格を重そうな鎧に包み、傍に剣を携えた厳しい印象の壮年の武人と、やや小柄な身体をゆったりとしたローブで覆った、栗色の巻き毛の青年の姿があった。 少年たちは、二人の姿とその存在から放たれるオーラに、否が応でも緊張を増幅させられる。何せ二人は、彼らの未来の上官達であるからだ。 「すっげぇ、あの二人」 「オーリー様、近くで見るとデカイな…」 「キルカ様こわい…。笑顔だけど、目が一切笑ってない」 「おしっこ、したくなってきた」 少年達がざわめきだす。
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