2章

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「もちろん僕は彼女たちに言ったのさ。この出会いを与えてくれた神に感謝してここはお二人にジェラートをおごらせてください、とね。若い男女が仲良くなるのに時間なんて必要なかったのさ。二人のご婦人のうちの一人とこのあとで飲み直すことにした。音楽のイケてるクラブで彼女をエスコートするという幸運に預かったのさ!僕は彼女の熱っぽい視線に気が付かないわけにはいかなかった。ああ、分かるかいシニョーレ?新たなアルコールを必要としていたのさ!僕たちは二人ともその場限りの熱いアモーレを渇望したという理由でね! そうしたらたまたま彼女のお姉さんがその店で飲んでいたので、ちょっと挨拶するって話になったのさ。もちろん、彼女のお姉さんならきっと美しいシニョリーナに違いない。そう思って僕の心も高まったさ!そうしたら神のいたずらか、後で合流した彼女のお姉さんこそが僕の婚約者だったってわけさ!」 「おめーのせいじゃねーか」 思わず僕は電話口でそう叫んだ。日本語だったのでアンジェロは気がついていないようだったが、僕の大声に驚いたドンくんが椅子から転げ落ちそうになった。「まったく不幸な事故だ。きっとシニョーレもそう思ってくれるだろうね。あれ?おかしいな。僕の友達はみんなこの話を聞くと同情してくれるんだけど」 不思議そうにアンジェロが電話口で僕に尋ねる。誰も誤解していなくて反論する気も起きない。 「まあ、とにかく気の毒だったね」と言うのがそのときの僕の精一杯だった。 それから僕はようやく言葉をつなげた。 「気の毒といえば、僕もいささか気の毒な状況に置かれていてね」 「ワオ」アンジェロが小さくそう言った。 僕の言葉に興味を持ってくれたのかも知れなかった。「いい加減」が服を着ているような男だったが、これで案外男気に溢れた人物なのかもしれない。 「CK305と言えば君ならぴんとくるかな?」 「なんてこった」 「そう、なんてこったって感じなんだよ。まさにね。来週までに納入しなくちゃいけないってのにハワイ沖で貨物船が消息を絶ってしまってね。いまほうぼうに在庫の確認をしているんだ」
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