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「つまり、その貨物船はアメリカ行きの船舶ですか?○○自動車向け製品を載せた?」
僕の隣に立っていたグレイのタイトスカートを履いたすらりとしたOLが半歩前に出た。
チョウノさんだ。
すかさずゴウタニ部長に助け舟を出したことで、なんとか折れた話の骨は繋がった。
さすがはチョウノさんである。この渉外三課のなかでは1番の古株であり、ゴウタニ部長からの信頼も篤い。
ゴウタニ部長は重々しくうなづいて、「そのとおり。なんとしても我々は彼らに部品を届け無くてはならない。世界が、我々の仕事を待っているんだ」
ゴウタニ部長は僕たちを順番に見回した。
休日出勤の午後である。僕とドンくんはこれで13連勤になるが、チョウノさんはこれで20連勤だ。さすがに海外渉外三課の面々にも疲労の色があった。
こんな時にタダノ課長がいてくれたら。
僕は休職中のタダノ課長のデスクの方を仰ぎ見た。休職10ヶ月に突入したタダノ課長のデスクは「こんな会社辞めてやる」と絶叫して出ていったときのまま誰も片付けずに残してある。総務課からの情報によればタダノ課長は診断書をもらって正式に休職されたそうだが、ゴウタニ部長によれば毎週末バーベキューやらキャンプやら川遊びやらに勤しんでいるようである。部長が24歳OLを詐称して作った偽アカウントのタイムラインにタダノ課長の投稿があるたびに「いいね」を押しているのだそうだ。仕事を休んで焼く肉はさぞかし旨かろう、と時折呪詛の言葉が部長のデスクから聞こえてくる。
この10ヶ月間、タダノ課長の代わりにゴウタニ部長がわれらが海外渉外三課の課長を勤めている。僕には他の課のことはよくわからないが、ゴウタニ部長は渉外三課だけでなく、国内渉外一課と海外渉外ニ課、それに渉外企画課の課長も兼任しているはずだ。部長の兼任している課がどこなのかはすぐに分かる。土日に出社している課員がいる課がそれだからだ。まさにエリート中のエリートである。
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