第八話

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「髪色で選んだことは謝りたい。だが、結果はそれで良かったと思っている」 「……何故ですか?」 目を丸くしているアイリに微笑みながら、ファビアーノはベッドに腰を移した。必然的に、距離が近くなる。 さらに目を丸くしたアイリを、そっと抱き寄せた。 「運命の相手を逃がすところだった」 我ながら恥ずかしいセリフだ、とファビアーノが考えている中、アイリはそっと目を閉じると、腰に手を回して、肩に顔を埋める。 ファビアーノが息をのんだが、アイリはしばらくそのまま動かなかった。 やがて、ぽつりと口を開く。 「陛下。私は幸せ者ですね。ありがとうございます。陛下のおかげで、私は愛を知りました」 アイリの言葉に、ファビアーノは笑った。 「大袈裟だな」 「陛下こそ」 寝室に、二人の笑い声が響く。 侍女たちがこっそり聞いていたなどとは、知る由もないのだった。
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