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顔面
その日、亜利沙と勇士の2人は、共に曇りがちの表情をしながら高級ホテル内のイタリアンレストランのテーブルに居た。
2人は何の会話も目を合わすこともなく、コース料理の2番目に来た無農薬の完熟トマトソースに手長海老やムール貝を絡ませた冷静パスタを黙々と食した。
ここで初めて勇士が話を切り出す。
「申し訳無かった」
勇士は元気の無い、か細い声で亜利沙に謝る。
「私が悪いのよ」
亜利沙は首を横に振り勇士の謝罪に気を配る。
勇士と亜利沙は、今年で結婚3年目を迎える矢先だった。2人とも三十路だが、まだ子供は居なかった。そろそろ子供を作ろうとした矢先に互いの浮気が発覚した。
どちらが先に浮気をし始めたのかは曖昧だが、先にバレたのは亜利沙の方であった。亜利沙の周辺の何者かがリークし、2人の自宅のポストに亜利沙と男がラブホテルに入って行く所を捉えた写真が入った封筒が送られたのが発覚した原因である。
その時勇士は亜利沙を激しく攻めた。不倫相手を殺してやるとまで息巻いた。それを恐れてか亜利沙は相手の素性を一切言わなかった
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