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「あの、今日は合コンに参加してらっしゃるんですか? つきあい、とか?」
このお店は合コンの貸し切りというわけではない。一般客も少数ながら存在する。
親友があからさまに探るような質問をしたのに、その男性はあっさりと答えてくれる。
「えぇ、合コンに。仕事にも慣れてきたところで、彼女でも作れって、友人に誘われて。あまり気乗りしなかったんですが、楽しい会話に癒されました」
先ほどの会話のどこに癒しの効果があったのか、彼の感性がちょっとおかしいのか、私には判らなかったけど、親友には何事かが納得できたのだろう、何度も頷いて、男性をまっすぐに見据えた。
「この子、ちょっと人見知りだけど、さっきも聞いていたとおり、話すとすっごくおもしろい子なんです。決まった人がいないなら、ちょっと付き合ってやってくれませんか? 私、この子と一緒にいるとずっと漫才になっちゃうから、いやなんです」
ひどいことを堂々と言われた。
「確かに、漫才でした」
ひどいことを肯定された。
でも、彼はまたぷくくっと笑いを漏らしながら、私の方に向き合って。
「僕はあまりぽんぽん言葉が出てくるタイプじゃないんだけど、イヤじゃなかったら、一緒におしゃべりしませんか?」
こくこく頷く。
「ツッコミ役としてはいまいちだろうけど」
また、ひどいこと言われた。
よほど情けない顔をしたのだろう、男性は私の頭をそっとなでた。
「なんだか、耳とかしっぽとかついてるみたいだ」
いつの間にか、親友はいなくなっていた。
空気を読みすぎだ! 置いてかないで。
男性の声が、思ったよりも近くで響く。
「そんな顔をしていると、お持ち帰りしたくなる」
立てなくなった。
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