いわゆる「卒アル見せて」問題

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アルバムに群がる五人の男女を横目に、食器の片付けを始める。 しかし、今の時代、自分達で撮る写真は何度もやり直しができて、さらに加工までできるというのに、この先長い年月をかけてなぜか興味を持たれてしまいがちな卒アルの写真にそれが適応されないのはいささか不公平ではないかと思う。 加工された写真が実物に近いとは決して思わないけど、加工されていない写真が実物に近いわけでもない。角度や表情によっては、別人のように見えることもある。 「え、これって……?」 突然驚きの表情で卒アルと見比べられ、こちらも困ってしまう。 だから嫌だったのに。 その写真は今の私とは別人だから。 「え、なんで今は眼鏡と前髪で顔隠してんの? こんな可愛いのにもったいない」 そう呟いたのは友人Dだ。ためらいなく異性に「可愛い」という言葉が使えてしまう少し軽い彼は、写真の面影を今の私を見出そうとしているのか、穴が開くほどこちらを見ていた。 私は友人Aが密かに彼に恋心を抱いていることを知っている。だから、ここからは見えない友人Aが今どのような顔をしているかは、想像したくない。
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