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『生き残った人たち! 聞こえますか?! 聞こえたら15分以内に中央バスターミナルに集まってください! 感染検査の後、本島へ搬送します! 繰り返します……』
あちこちの放送設備に向かってゾンビが突進している。
見る見るうちに近づいた5~6機の輸送ヘリが、ゾンビがほとんど居なくなったバスターミナルに着陸するのを、私は満足して見つめた。
「島のかたですか!? 救助に来ました! 検査をしますのでこちらへ!」
「不要!」
「え?」
「私たちは、島民がここへ集まりやすいようゾンビを倒して回る! キミたちは一般庶民たちを救出したまえ!」
――シュウン! シュウウン!
電動トライクのアクセルを目いっぱいに吹かして、私たちは颯爽と走り去る。
その背中に「せめてお名前を……」と言う芝居がかった言葉がかけられた。
にやりと笑って、私はメガネをクイッと持ち上げる。
「私の名は松戸博士! 世界をゾンビから救う、正義のマッドサイエンティストだ!!」
「兄さま素敵ですわ!!」
「うわはははは! 彩子! ……当然だ!」
こうして私たち松戸家は鹿翅島の島民の命を数多く救い、3日後に自前のクルーザーでこの島を後にする。
それは正義のマッドサイエンティスト松戸博士の名が、世界に広がった最初の事件であった。
――松戸 博士(まつど ひろし)の場合(完)
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