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今までの研究通り、ゾンビは動きが遅い上に視力は殆ど無く、その行動は主に聴力に頼っているようだ。
そっとゾンビに近づき、向こうの攻撃の範囲外からネイルガンを打ち込む。
――ビスビスビスッ、ビスビスッ
勢いよく飛んだ4センチほどの長さの釘は、ゾンビのおでこ周辺に連続で突き刺さり、その動きを一瞬で止めた。
「ふむ……研究通り、前頭葉に傷を受ければ動きを止めるらしいな」
「お見事ですわ、兄さま」
目をハートマークの形にせんばかりの勢いで、妹はぴょんぴょんとその場で跳ねる。
わたしは前髪をふわっとかき上げると「行くぞ」と、まず庭のゾンビの掃討を始めた。
30分もかからずに庭のゾンビの殲滅と門扉の固定が完了する。
ゾンビが齧ったと思われる太陽光発電のケーブルを応急処置して、私たちは母屋の捜索に取り掛かった。
いくら部屋が20数部屋あるとは言え、庭に比べれば屋内は狭い。
一部屋ずつゾンビを確認し、何匹かの元使用人のゾンビを倒せば、松戸家の制圧は簡単だった。
「後は屋上と地下室だけだな」
屋上の扉をそっと開ける。
そこには誰もいない。
私は扉をロックして、妹の方を振り向いた。
「ヴぁぁァァアあぁぁ」
「兄さまっ!」
――ビスビスビスッ、ビスビスッ、ビスッ
私の見ている前で、妹の二丁ネイルガンが火を噴く。
右手のネイルガンから打ち出された釘が私の首筋を霞めて、背後の物陰に潜んでいたゾンビの脳天を打ち抜く。
左手のネイルガンは屋根裏部屋へ続くハシゴから頭を出したゾンビを撃ち、そのまま流れる様に、私の足元に忍び寄っていたモルモットのゾンビを床に縫い付けた。
妹は、ぴくぴく動くモルモットの釘をぐいっと踏んで床に深く突き刺し、怒りに満ちた目で天井からずるずると落ちてきたゾンビに詰め寄ると、無言でネイルガンを連射する。
「兄さまを襲おうなんて百万年早いんですわ! このっ死体野郎っ! ですわっ!」
――ビスビスビスッ、カシュ、カシュ
妹は、釘の無くなったネイルガンに、ランドセルから取り出した釘100本シートを無言でセットすると、ハシゴの途中に引っかかったままはりつけにされたゾンビを通り過ぎ、今度は私の背後から襲い掛かろうとしたゾンビを床に磔にした。
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